。o●.。oo○ふてぶてしいルークの生き方。「クールハンドルーク」

みんなその小屋のことはわかっていた。
ルークがどんな気持ちでいるかは容易に想像がついた。

むきだしの木の床に寝転び、
夜の冷気に震えながら、
格子窓の外の電球に吸い寄せられて集まる
カを払っているに違いなかった。

体がつっぱり、痺れて眠ることができない。
一日の作案で疲れ果て、
泥だらけのままだ。

腹が減り、
タバコが吸いたくて仕方がないはずだ。

しかし、俺たちはまだルークというやつを知らなかった。
まったくわかっていなかった。

調理係のひとりがその事件を教えてくれた。
翌朝早く、起床の鐘の前に、守衛がその調理係と
監視員を連れて懲罰小屋に行き、
ルークに食い物と水をやって、
便器の糞尿を始末しようとした。

しかし、鍵をはずして罪を開けると、
ルークは戸口に頭を向けて横になり、
ぐっすり眠り込んでいた。

かっとなった守衛は、やつの顔を蹴りはじめた。
「この野郎、立て。俺が来たら立ってるんだ。
いいか。この中じゃ、さがって立ってるのが決まりだ」

ルークは飛び起き、頭を振りながら、
小屋の壁につかまろうともがいた。

唇が切れて流れた血が、
寝間着の前にしたたっている。

目をしばたたかせ、
ふらついて立っているルークを、
守衛はカタカタと入れ歯を前後に動かしながらにらみつけた。

それから何も言わずに
ドアを叩きつけるように閉めて、鍵をかけた。

その日、ルークは俺たちが作業に出ているあいだずっと
懲罰小屋に入れられたままだった。

俺たちは仕事を終えて戻ると、
晩飯を食い、
シヤワーを浴びてベッドに入った。
懲罰小屋の電球は一晩中ついていた。

水曜日の朝、守衛はまた
雑用係と監視員を伴って小屋に行った。
ドアを開けるとルークは奥で腕を組んで立っていた。

守衛が満足げに表情をくずしかけたとたん、
ルークが迷惑そうな声を出した、

「ドアを閉めてくれないか。隙間風が入ってくるんだ」

守衛は固まった。
信じられないという顔でルークを見据えたまま立っていた。

そしてまた入れ齒をカタカタさせると、
ドアを力まかせにバタンと閉めた。

俺たちはその日も、つぎの日も作業に出た。
懲罰小屋の電球はまだともっていた。

四日目の朝、守衛が小屋を開けるときには、
うしろで監視員のキーンが片目を細め、
ショットガンの狙いを
ルークの腹のど真ん中に合わせて立った。

老いぼれのキーンは体が震え、
噛みタバコを噛みながら
二連の筒先をゆらゆらと揺らしていた。

ルークは二日前とまったく同じように、
小屋の奥で腕組みをして立っていた。

ただ、目に生気はなく、
顔は薄汚れて髭が伸びていた。

監視員たちがかわいがっている
子犬のルドルフが長い耳を揺らして走ってくると、
じゃれて吠えながらキーンの足元でクンクン鼻を鳴らした。
やつは銃を構えたまま、
タパコを噛む口も休めず、それを足で払いのけようとしている。

守衛がニヤリとした。
やつは厚焼のピスケットをー枚手にしていた。

手のひらの上で重さを計るように放り上げて受けとめた。
「腹ぺこだろ、ルーク。焼きたてのビスケツトだ、
ほしいだろ。おまえのような大食らいじゃつらいよな。
四日だからな。こいつはきっとうまいぜ。

だが、ちよっと待った。
このルドルフも腹をすかしてるんだ。
かわいい子犬を放っておくわけにもいかねえだろ。
そこでだ、このワン公と
半分こにしようじやねえか。いいだろ」

守衛はニヤッと笑うとビスケツトを半分に割った。
片方を左手に残しておいて、
もう片方をルドルフの頭の上に持っていく。
犬は吠えながらしっぽを振ってしやがみ込むと、
うまそうな餌をじっと見つめた。
「さあ、ルドルフ。吠えてみろ。
さあ、いい子だ。ほら、ワンと言え。ワン、ワン」

ルドルフはワンと吠えて小首をかしげ、
横目でピスケツトをにらんだ。
それから後ろ足で立ってピスケツトをもらうと、
夢中になって飲み込んだ。
守衛は犬のわき腹をピタピタと叩いてから
ルークのほうに向き直った。

「さあルーク。こいつはお前の分だ。
ゆっくり味わえよ。今日の分はこれだけだからな」
ルークはぐっと目を細めて見つめながら、
低く乾いた声でつぶやいた。

「そいつもルドルフにやってくれ。
あんまり腹が減ってないんだ」
守衛の下の人れ齒が思い切リずれて、左の頼がふくらんだ。
引用元
クール・ハンド・ルーク

こちらからもお届けしてます。

⇒アンテナサイト

健康と医療ランキング

にほんブログ村

まとめサイト

Share this...

Google

Facebook

Twitter

Linkedin

Pinterest

Tumblr