ムダだからこそ思い切り勝ち負けにこだわれるんです。じゃんけんと同じです。

「「皆から愛される」をモットーに夢ではなく目標として甲子園を目指します」（都立富士森高校）
彼らは「愛」に飢えているのだろうか。
他にも「誰にでも応援されるチームをモットーに、まずは初戦突破を目指します」（京華高校）、
「応援される立場としてふさわしいﾌﾟレー､態度を心掛ける｣(渋谷教育学園渋谷高校)と言う具合で、
彼らは野球で勝つことより
周囲への気遣いばかり
に専念しているかのようなのである。

その点、同紙に掲載された開成の「抱負」は明快だった。

「プロ注目の投手と対戦し、力を人れている打撃をぶつけて打ち崩したいです」
要するに強豪校撃破。
開成だけが、いうなれば喧嘩腰なのである。

「野球には教育的意義はない、と僕は思っているんです」
青木監督はきっぱりと言った。
野球はゲームにすぎないと。

「そうですよね」

私がうなずくと監督が続けた。
「野球はやってもやらなくてもいいこと。
はっき言えばムダなんです」

「ムダ、ですか？」

「これだけ多くの人に支えられているわけですから、
ただのムダじやない偉大なるムダなんです」

「偉大なるムダ？」

「とかく今の学校教育はムダをさせないで、
役に立つことだけをやらせようとする。
野球も役に立つということにしたいんですね。

でも果たして、何が子供たちの役に立つのか立たないのかなんて
我々にもわからないじゃないですか。

社会人になればムダなことなんてできません。
今こそムダなことがいっぱいできる時期なんです」

「しかし「ムダ」だと言い切ってしまうと、何のためにやるのかと、、、、」

「ムダだからこそ思い切り勝ち負けにこだわれるんです。
じゃんけんと同じです」

「じゃんけんですか？」

「勝ったからエラいわけじやないし、
負けたからダメなんじゃない。
だからこそ思い切り勝負ができる。
とにかく勝ちに行こうぜ！と。
負けたら負けたでしようがないんです。
もともムダなんですから。

じゃんけんに教育的意表があるなら、
勝ちにこだわるとなんか下品とかいわれたりするんですが、
ゲームだと割り切ればこだわっても罪はないと思います」

確かにそうである。
そもそもお互いが勝とうとしなければゲームにもならない。

「信頼」や「思いやり」などは日常生活で学ぺばよいわけで、
なにもわざわざ野球をすることもない。

野球は勝負。
勝負のための野球なのである。
偉大なるムダに挑む開成高校硬式野球部。

すべてがムダだからこそ思い切りバットを振る。
どのみちムダだから遠慮はいらないのである。
引用元
「弱くても勝てます」: 開成高校野球部のセオリー

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